受賞

第32回大平正芳記念賞(大平正芳記念財団主催)受賞コメント:三重野文晴教授

受賞にあたってのコメント

 思いがけず拙著『金融システム改革と東南アジア−長期趨勢(すうせい)と企業金融の実証分析』(勁草書房)に対して大平記念財団の大平正芳記念賞を賜りました。大変光栄に感じております。この本は、3つの大学で教員として過ごした前半生で柱となってきた研究テーマを、和文モノグラフとしてとりまとめてみたものです。自分にとって幾段階かの研究をつないだ形になっており、それを振り返ってみると大学院・助手時代も含めて過ごした所属先の「研究カラー」あるいは「流派」の影響をその時々で受けてきたように思います。本書の柱である長期歴史統計の構築を通じた長期趨勢の観察と、企業レベルデータによる企業金融分析という2つのアプローチの両立と、そこから政策評価を行うという構成は、それ自体なかなか珍しいものなのではないかと思っています。本書を出版したのは東南アジア研究所に着任後して3年目の終わりになりますので、とりまとめの発想の部分で本研究所の「カラー」から何らかの影響を受けているようにも思います。

 アジア経済に関わる地域研究には、個別ケースやミクロなテーマの掘り下げと同時に、経済システム総体としての特徴の把握と、他地域との比較によるその相対化が大事だと思っています。それをどうすればできるのか、それができる学問領域の形成や研究者育成どのようにすればできるのかについては、まだまだ模索の中にいますが、この本を書く中で問題の輪郭がなにがしかが見えてきたようには感じます。

 本書の出版とそこに至るまでの研究を支えてくれたたくさんの方々への感謝しつつ、今後さらに精進して参りたいと思っております。

(三重野文晴)

 

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