The Nippon Foundation Fellowships for Asian Public Intellectuals


Yuria Furusawa 古沢 ゆりあ

Yuria Furusawa
古沢 ゆりあ

総合研究大学院大学比較文化学専攻
博士後期課程


http://www.philippineart.michikusa.jp/

プロジェクトのテーマ

近現代フィリピンにおける民族衣装をまとった聖母像の研究

プロジェクト概要

「民族衣装をまとった聖母像」とは、それぞれの土地の民族衣装をまとい現地の女性の容貌で表現されたキリスト教の聖母マリアの聖画像であり、特に20世紀以降、アジアの様々な地域に見出すことができます。本研究は、フィリピンにおける民族衣装をまとった聖母像について、西洋美術(とくにキリスト教図像学)の受容、女性の表象、民族衣装とアイデンティティなどの観点から、その成立の要因と展開の過程を明らかにするものです。
人口の約8割がカトリックのフィリピンでは、聖母像は文化の中で重要な役割をになってきており、美術作品においても多くの作例を見ることができます。植民地時代においてはおもに西洋の様式による聖画像が導入されましたが、近代になると意識的に在来の伝統を反映した作品が作られるようになり、このことには外来文化の受容と変容、また自文化の自覚化が表れていると思われます。一方、近代国家において「民族衣装をまとった女性」像は、国やその国の伝統的要素を象徴するものとしても機能してきており、そこには、社会において女性に与えられた役割や「真正な」伝統文化の創出などが見てとれます。
以上のような観点から、近現代美術の作例や大衆的な聖画像にみられる「現地の聖母」像を調査します。この研究が、現代のアジアにおけるアイデンティティの変化とその社会的・歴史的・文化的背景に関する新たな一提言となればと思います。

研修国

フィリピン

自己紹介

 美術作品や美術作家、また美術館・博物館の活動など、美術に関わる人・物・場に関心を持ち藝術学を学んできました。そのなかで特に、アジアにおけるキリスト教美術の受容と展開(「土着化」=インカルチュレーション)について、フィリピンを対象に研究をおこなっています。
 東京藝術大学美術学部藝術学科、九州大学大学院人文科学府藝術学専修(修士課程)を卒業し、2011年4月より総合研究大学院大学比較文化学専攻(博士後期課程)に在学。