過去のお知らせ

第153回研究会

   
「中国内モンゴル自治区における農牧民の家畜生産および生活環境の変化」


【話題提供者】
 長命 洋佑氏(日本学術振興会特別研究員:龍谷大学)
  【日時】 2011年12月9日(金)午後16時00分〜

【場所】京都大学地域研究統合情報センターセミナー室(稲盛財団記念館2階213号室)
 *通常と部屋が異なります

【要旨】
 中国では、1978 年の改革開放以降、それまでの計画経済は終焉をむかえ新たに市場経済化の波が押寄せることとなった。伝統的な遊牧民による酪農生産においても黄牛や山羊の生乳を利用した乳製品の加工による自給型農業から、市場メカニズムを導入した商品作目へと転換した。
 著しい経済発展を遂げた中国であったが、その発展は生態環境の悪化を招くこととなった。一例として、家畜の過放牧による生態環境の悪化が大きな問題となっている。生態環境の悪化は、砂嵐、黄砂、旱魃、草原退化などを引き起こし、現地の農牧民の生業や周辺地域にも多大な危害を与えている。特に内モンゴル自治区では、それらの問題が最も深刻化している地域の一つである。内モンゴル自治区では2001年度より、生態環境保全を目的とした政策の一つとして「生態移民」政策が実施されている。「生態移民」政策は、悪化した生態環境を改善・保護するとともに、環境の脆弱な地域で暮らしている農牧民に対し、新たな村や町を建設し農牧民をそこに移住させ、自立的な農業経営への転換を図る政策である。具体的には、自然条件が劣悪な地域で家畜の放牧を行っている農民を都市近郊や環境条件の良い地域へ移住させ、そこで経済性の高い家畜であるホルスタイン種乳牛を飼養させ、酪農経営を営むことにより貧困からの脱却を図る。また、この政策では、家畜の放牧を行っている農牧民を移住させることにより、それら農牧民が所有している放牧地の環境を改善させることも狙いとして含まれている。
 本報告では、こうした環境保全政策が、内モンゴル自治区における農牧民にいかなる影響を及ぼしたのかについて、農牧民の家畜生産および生活環境の変化に着目し、報告をする。


*会の後には懇親会を予定しております。


第152回研究会(「第188回 日本熱帯農業学会研究集会」共催)

   
「熱帯アンデスの環境と農業」


【話題提供者】
 山本 紀夫氏(国立民族学博物館名誉教授)
  【日時】 2011年10月21日(金)午後15時00分〜

【場所】京都大学稲盛財団記念館3階 大会議室
 *通常と部屋が異なります

  案内ポスター [PDF: 290KB]

【要旨】
 アンデスは、赤道を超えて8000kmの長さにわたって南北に走る、地球上で最長の大山脈である。そのため、緯度によって環境は大きく異なり、一般に北部アンデス、中央アンデス、南部アンデスの3地域にわけられる。このなかで、熱帯アンデスとは、低緯度地帯に位置する北部アンデスと中央アンデスのことである。そこは、緯度が低いため、高地であっても気候は比較的温暖であり、人々はかなり高地にまで暮らしている。とくに中央アンデスでは、富士山の頂上よりも高い標高4000mあたりでも農耕や牧畜が営まれている。また、この農耕や牧畜を営む人たちの大半が、かつてのインカ帝国を築いた人々の子孫、いわゆる「インカの末裔たち」である。では、その農耕や牧畜はどのような特色をもつのだろうか。発表では、私が1978年から通産で約2年間定住して調査をしたペルー南部クスコ県のマルカパタ村を例として報告する。
 マルカパタ村は、かつてのインカ帝国の中心地であったクスコの東方約100kmに位置する。ただし、道路の状態は悪く、定期的な交通の便もないため、当該地域は地理的にかなり隔絶したところとなっており、インカ以来の伝統的な色彩が様々な点で色濃く残されている。それは、彼らの生活の中心である生業にも色濃く残されている。約50種におよぶ栽培植物の大半はアンデス伝統のものであるし、中心的な農具もインカ以来の伝統である踏み鋤が使われている。また、大半の住民がアンデス原産のリャマとアルパカを飼い、その家畜飼育とともに伝統色の濃い農業もおこなって自給自足的な生業を維持しているのである。
 具体的にいうと、彼らは海抜4000m前後のプナとよばれる高原に居住地をもつが、その暮らしは高地に限られない。すなわち、アンデス東斜面に見られる大きな高度差を利用し、家族ごとに家畜を飼い、主作物であるジャガイモもトウモロコシも栽培している。これらの耕地のなかには家から遠く、毎日通うことのできないものもある。そのため、このような耕地には植え付けや収穫のときに一時的に
移り住んで作業をするための出作り小屋をもち、また放牧地にも家畜番小屋をもつ。そして、これらの小屋を利用して、彼らは一年を通して谷を上下し、農業も牧畜も行なう、いわゆる農牧複合の暮らしを送っている。このような暮らしこそが、中央アンデスにおけるインカ時代以来の伝統的なものである。

【プログラム】
15:00−15:15 開会・趣旨説明
15:15−16:45 講演
16:45−17:00 休憩
17:00−18:00 質疑応答

*会の後には懇親会を予定しております。

第151回研究会

   
「東南アジア産物交易における 仲介商人ネットワークの役割―19世紀前半のシンガポールを中心に―」


【話題提供者】
 小林 篤史氏(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)
  【日時】 2011年6月17日(金)午後16時00分〜

【場所】京都大学地域研究統合情報センターセミナー室 (稲盛財団記念館2階213号室)
 *通常と部屋が異なります

  案内ポスター [PDF: 176KB]

【要旨】
  本報告は、19世紀前半の東南アジア域内交易の成長を統計的に示し、さらにその域内交易を担ったシンガポールのアジア人商人活動の実態を明らかにすることを目的とする。
 近年、近代東南アジアの貿易拡大を19世紀後半の植民地期に見出す従来の認識を修正する、19世紀前半の東南アジアの貿易活性化を指摘する研究がみられる。アンソニー・リードは19世紀前半の東南アジアにおける胡椒、コーヒー、砂糖の輸出成長率が、19世紀後半よりも高かったことを長期のデータから示し、前半期の活発な貿易活動を明示した(Reid,
1997, The Last Stand of Asian
Autonomies)。すなわち、19世紀前半のアジア人商人主体の貿易活性化に、近代東南アジアの輸出経済拡大の契機があったことが示唆される。こういった研究の流れを深化させていくために、本報告では19世紀前半の東南アジア域内交易の動向と、その担い手であるアジア人商人活動の実態を、イギリス植民地港シンガポールに焦点を当てながら考察する。
 まず統計資料を用いて域内交易の動向を把握する。19世紀前半の東南アジアにおけるイギリス海峡植民地(シンガポール・ペナン・マラッカ)とオランダ領ジャワの貿易統計を吟味し、これら4植民地の近隣東南アジア地域との交易、すなわち域内交易を抽出すると、少なくとも1820年代以降、英蘭植民地を中心とした域内交易は成長していた。そしてその成長にシンガポールは大きな比重を占めていた。
 シンガポールの域内交易は、西欧商人の仲介業を担う商人を中心に、現地の言語、文化、商業慣行に精通した華人、ブギス人、マレー人といった多様な商人の活動が繋がることで成立していた。仲介商人を結節点とした彼らの活動によって西欧からの綿工業品、中国へ運ばれる森林産物や海産物、そして現地大衆食糧の米が流通していた。シンガポールの域内交易は、域外の貿易体制に対してオープンでありながら、そこはアジア人商人たちが商業知識、取引関係、そして資本を蓄積するフィールドだったのである。
最後に、近代東南アジア経済史における、19世紀前半の域内交易成長の意義に若干の検討を加えたい。前近代からの東南アジアの経済展開の主役は、多様な生態環境の差異を利用して利潤を上げる、脱生態的な存在である商人たちであった(原,
1999,『エリア・エコノミックス』)。東南アジアの商業活動が西欧主導の世界経済と密接に結び付き、近現代の局面に移行していくに際して、域内で醸成された地域市場秩序(支配体制、法体系、経済慣習、社会規範)がどのような役割を果たしたのかを、域内交易という視点から考察する。

*会の後には懇親会を予定しております。

第150回研究会

   
「ブラジルアマゾンの土地なし農民の生活への生産とcommon goodsの影響」


【話題提供者】
 石丸 香苗氏 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  【日時】 2011年4月15日(金)午後16時00分〜

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階 中会議室

【要旨】
 ブラジルにおける土地なし農民運動は、1988年憲法186条の一文である「すべての土地は生産活動に利用されなければならない」を逆手にとり、土地を持たない農民達(センテーハ=landlesspeasant)が放棄耕作地・牧地に侵入・占拠し、生産活動を行うことによって土地の所有権取得を求める活動である。背景には、5%の土地所有者が耕作可能地の70%以上を所有する土地分配の不均衡や(Renner1997)、世界三位といわれる経済格差 (UNDP2010)、総人口の1/3が貧困層向けの援助(bolsafamilia)を受けている現状が存在する。
運動はブラジル全土に広がり、特に地方では耕作可能な土地を得やすいことからアグロフォレストリや有機農法の試みを取り入れた積極的な生産活動を行うコミュニティが多く認められる(Kondo2005)。こういった地方の土地なし農民コミュニティはインバゾン(侵入者)と呼ばれ、ブラジル国内では森林破壊の元凶や不法占拠の脅威、また度々暴力と犯罪の源というバイアスを受けると同時に、世界的には国家の最貧困層が自ら生産環境を手に入れ生存のための礎を築く社会運動として一定の評価を受けている。
豊富な森林資源を持つブラジル北部のアマゾン地帯では、慣習的に食料としての果樹、建材としての木材、上質な水源や多くの薬用植物は、誰もが利用可能なcommongoodsである。法廷賃金の半分以下で生活をする極度の貧困層が全人口の3割を占めるブラジルの中でも、ブラジル北部地域は特に貧しい地域であるが、アマゾン地帯の貧困層が現金収入に頼らず生活を維持する仕組みにはこれらcommongoodsの寄与が大きいと考えられる。
ブラジル北部アマゾンの森林に侵入した土地なし農民の生活には、これら「占拠した土地での生産」と「近隣の自然からのcommongoods」の両方が大いに関係していると考えられる。昨年の調査では、生産とコモンによる土地なし農民の生活の改善状況を調べることを目的に、アマゾン河口部ベレン近郊のサンタバーバラ郡にある、居住年数の異なる二つの生産活動の活発な土地なし農民コロニーを対象として家計調査、生産物調査を行った。今回はブラジルアマゾンの二次林に進入した土地なし農民の生活の紹介と簡単な調査結果報告を行う。

第149回研究会

   

「変容過程にある焼畑営農体系における民族ごとの戦略 〜ラオス北部の民族混住村を事例として〜」


【話題提供者】
  亀田 知佳氏 (京都大学大学院農学研究科)
  【日時】 2011年2月18日(金)午後16時00分〜

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階 中会議室

【要旨】
 東南アジアでは伝統的に、広く焼畑農耕がおこなわれてきた。しかし現在、政治・社会・経済的な状況の変化をうけ、焼畑農耕システムが他の土地利用法へと変容しつつある。その要因や背景は地域や民族により様々であり、その詳細はまだ部分的にしか理解されていないのが現状である(Mertzet al, 2009)。
 ラオスは東南アジア大陸部に位置する内陸国で、国土の約7割が山林にしめられている。特に北部は山岳地帯で、焼畑農耕が主な生計手段のひとつとなっている。ラオス政府は森林保護と山地民の生活向上を目的とした、一連の焼畑抑制策を1990年代後半より実施してきた。ひとつは山地民の移住政策であり、もうひとつは林野土地配分事業と呼ばれる、土地を区分し、農民に一定区画の農用地を配分し、他の林地での焼畑を禁止する政策である。これらの政策の影響を受け、現在ラオスでおこなわれている焼畑農耕は変容の途上にある。
 今回の発表では、ラオス北部ルアンパバーン県における、移住政策後に低地へ移住してきたカム族・モン族が集住する村を事例とし、焼畑営農システムの現状を報告したい。特に、民族間に見られる状況・戦略の違いに着目する。

第148回研究会

   
ネパール丘陵地域の家畜飼養管理についてー特に樹木の利用に注目して


【話題提供者】
 熊谷元氏 (京都大学大学院農学研究科)
  【日時】 2010年12月17日(金)午後16時00分〜

【場所】稲盛財団記念館 3階 中会議室

【要旨】
ネパール丘陵地域(標高300m〜2500m)はネパールの国土面積の42%、総人口の46%を占めるが、起伏が激しく、灌漑が困難な場所が多い。耕地拡大により耕種・換金作物栽培に特化した地域もあるが、一方で作物生産の他に、圃場残渣、野草、樹木の葉等を利用する家畜飼育を組み合わせた有畜複合農業も多く見られる。飼料木の利用を積極的に行う中標高域(標高1000〜1500m)の2農村をターゲットとして、雨季、涼乾季、暑乾季において土地利用、作物生産、家畜生産、飼料利用の状況を調査した結果を報告する。特に、家畜飼養に用いられる樹木の葉、野草、作物残渣の給与状況の季節変動と、樹種の多様性に着目する。併せて、タライおよび山岳地域の土地利用、農業・畜産そして人々の暮らしについても概況を報告する。

第147回研究会

インドネシア・リアウ諸島州におけるマングローブ林生態系の地域利用と保全
 ―移動性小規模製炭業従事者に注目して―


原田 ゆかり 氏 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

  【日時】 2010年10月15日(金)午後16時00分〜

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨】
 東南アジアでは1980年代にエビの集約養殖池が広がり, 2000年にはインドネシアにおけるマングローブ林生態系の減少率は,1980年に比べて31%となった(村井 2007)。その主要因としては, 物流の仕組みの近代化や海外資本の流入による産業用地としての開発や,農用地・塩田・養殖池への土地利用転換が挙げられる。現在, マングローブ林生態系の減少・劣化によって, マングローブ林生態系の持つ,熱帯・亜熱帯地域の沿岸部の保護, 水産資源の涵養などの機能が衰退し, 津波被害や漁獲高の低下など,地域住民の生活を脅かしている。上記のような国外経済の影響を大きく受けている, インドネシア・リアウ諸島州バタム島において,地域住民のマングローブ林生態系利用, 国外経済の影響, マングローブ林の状態の関係性を明らかにし,沿岸域に暮らす人々の生存基盤の回復を伴う利用とマングローブ林生態系保全の両立について考察した。
 各官庁の公文書, 統計資料からリアウ諸島州およびバタム島の特徴を調べると共に, 漁業, 物流業, 観光業, 製炭業など,住民の主な業種が異なる4つの村集落において, マングローブ林生態系の利用に関する聞き取り調査を行い,またマングローブ林生態系利用の異なる場所, 都市部に近接した森林, ツーリズムに利用されている森林,薪炭材伐採が行われている森林において森林構造調査を行った。結果,以下の3つの現状が明らかになった。@地域や業種によってマングローブ林生態系利用方法における,直接利用(薪炭材利用)と間接利用(水産資源涵養・景観利用)の割合は異なった。Aバタム島は物流ハブ港として工業発展を遂げたため,エビ養殖などの土地利用の転換が行われなかったことも,マングローブ林の二次再生を促す大きな一因であると考えられた。Bマングローブ木炭は主に輸出用であった。製炭用の伐採は択伐・小面積皆伐であり,森林再生の可能なサイクルで伐採が行われていた。
 以上の調査から, 現代の地域社会における現状の一例と共に, マングローブ林生態系の利用と保全の両立の一例を観察出来た。囲い込みによる完全な人間利用の排除だけが, マングローブ林生態系の保全方法ではない。地域住民のマングローブ林生態系利用と,その保全・再生をどのようにして両立させていくかを考えることが, 最も現実的で実現可能なマングローブ林生態系の保全へと繋がると考えた。
 現在筆者が最も注目しているのは、調査地の1つである移動性製炭集落である。上述したように、バタム島は急激に発展の進む島であり、諸外国による工業団地が存在し、生活水準も高い。彼らが作るマングローブ木炭は、大部分が国外向けの換金商品であり、収入は多い。しかしその生活は電気も水道もなく、薪炭以外の物を全て集落外から得ている。インドネシアにおいて、マングローブ林の伐採は違法である。しかし彼らは「これは我々の伝統的な生業である」と主張し、違法性を認識しつつも伐採を依然として続けている。失業者が増加するため、政府も完全に伐採を禁じることが出来ない。バタム島内には、先進国的なものと途上国的なものが混在しているようにも感じられ、興味は尽きない。

〜〜来聴歓迎〜〜


第146回研究会

換金作物栽培とアフリカ狩猟採集社会の可塑性、および狩猟採集民=農耕民関係の変容:カメルーン東部州におけるバカ・ピグミーとバクウェレの事例から


【話題提供者】
 大石 高典 氏(京都大学こころの未来研究センター、特定研究員)

  【日時】 2010年6月11日(金)午後16時00分〜午後18時45分

【場所】稲盛財団記念館 2階214号室(地域研究統合情報センターセミナー室)
                              ※会場がいつもと異なります!

【要旨】
換金作物栽培は、財を生み出す営為であるという点において、自給作物栽培とは決定的に異なる性格をもつ。これまで、アフリカ狩猟採集民社会は徹底した平等主義社会であると記述・分析されてきた。そこでは、コミュニティ成員の間で分配しにくい所有物や富の発生は徹底的に嫌悪され、回避されるとされてきた。しかし、そのような社会が農耕化し、農作物の自給を経て、換金作物栽培が開始された場合に何が起こるだろうか。
誰の目にも明らかな財の発生やそれを生み出す土地の資源化が進めば、これまでの所有や分配の規範は変容してしまうのか、あるいは新しい状況に対応した仕組みや行動によって維持されるのか。
カメルーン東南部では、フランスによる植民地時代に野生ゴム採集を経て、換金作物としてカカオが導入された。その後、ピグミー系狩猟採集民バカ人を含む様々な民族集団によってカカオ栽培は受容され、次第にまとまった現金収入を得るほぼ唯一の手段となっていった。カカオ買取価格の高騰が起こると、集落周辺の土地利用に急激な改変が起こった。例えば、ブンバ・ンゴコ県モルンドゥ市の近くの調査村は、1960年以降に形成されたバクエレ人とバカ人約550人の集落だが、今日では集落周辺約5キロ四方に130を超える数の合計面積230ha以上に及ぶカカオ園を確認できる。これらのほとんどは、バカ人、バクエレ人といった先住諸民族によって開かれたものだが、近年その所有権や利用権をめぐる対立や紛争が絶えない。その理由の一つは、1980年代の熱帯林木材伐採事業に伴って移住・定着した商業農民による土地やカカオ園の買収である。発表者は、カカオ園の土地利用歴、賃貸・売買契約、放棄事例の悉皆調査を聞き取りとGPSを併用した現地踏査により行い、プランテーション群の形成過程と所有・利用権の動態、世代間相続の状況などを調べた。その結果、多くの先住民にとって、カカオ栽培に投資した労働に見合うだけの現金収入を得ることはおろか、プランテーションの世代間継承も困難な状況にあることが分かった。なぜ、自分たちで開いたプランテーションを維持できなくなってしまうのか。外部資本の介入やアルコール飲料への依存といった他の狩猟採集民においても報告されている要因のほか、カカオ園が生み出す富をめぐる個人主義的振る舞いの発生と放任といった問題が看取された。事例に基づき、狩猟採集民社会における財をめぐる個人主義と平等主義の相克について考察するとともに、変わりつつある狩猟採集民―農耕民関係について報告する。

〜〜来聴歓迎〜〜

第145回研究会

 東南アジアの自然と農業研究会共催:田中耕司先生退職記念シンポジウム
『アジアの稲作研究からアジア地域研究へ』


田中 耕司 氏(京都大学地域研究統合情報センター)

  【日時】 2010年4月17日(土)午後14時00分〜

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階大会議室


 田中耕司さんが、平成22年3月末をもって京都大学を定年退職されました。
田中さんの研究を概観すると、学生時代から続けられている日本の農業技術史に関する研究、東南アジア研究センター(当時)に移られてからの東南アジア諸地域における農業体系に関する研究、これらを、稲作を中心として系譜論的に分析し類型化したアジア稲作文化論に関する研究という一つの道筋が見えてきます。
一方、スラウェシ地域研究に代表されるフロンティア社会論や、インドネシアや東南アジア大陸山地部における生態資源の利用と管理に関する問題への取り組みがもう一つの柱です。これらの研究はいずれも、幅広い総合科学としての農学、農業・農村研究として高く評価されるとともに、「農」を基盤とする地域社会論としても大きな可能性を示しています。
この機会に、これまでに田中さんとともにフィールドを歩いた方々、田中さんの薫陶を受けた方々、さらに、これから田中さんとともにフィールドへ行こうと考えておられる方々にお集まりいただき、40年に及ぶ田中さんの研究の大きな流れを踏まえ、田中さんのアジア地域研究の展望を描くシンポジウムを開催します。ぜひご参集ください。

プログラム:

13:30〜 受付

14:00〜14:10 趣旨説明

14:10〜14:50 遅沢克也(愛媛大学)
「東南アジア・フロンティア社会論(仮題)」

14:50〜15:30 Terry Rambo(コンケン大学)

“The Interface between Social Science and Agricultural Science”

15:30〜15:50 休憩

15:50〜16:30 徳永光俊(大阪経済大学)

「比較農法史研究に『個体・群落』の農法の視点は有効か」

16:30〜17:30 田中耕司さんのレスポンスとディスカッション

18:00〜20:00 懇親会


〜〜来聴歓迎〜〜


第144回研究会

東南アジアでの持続的な林業は可能か?:現状分析と展望


神崎 護 氏(京都大学農学研究科森林科学)

  【日時】 2010年2月19日(金)午後16時00分〜

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨】
 バイオエネルギー活用や,循環可能でカーボンニュートラルな資源の重要性が高まる中,木材資源の利用もさらに拡大することが予想される.同時に,カーボンシンクとしての森林の重要性と,生物多様性の保全対象としての森林の重要性も高まっている.東南アジアの熱帯林は,低コストでの木質資源の供給源となりえると同時に,巨大なバイオマスを持ち,高い生物多様性を内包するという点で,両者のバランスが強く求められる地域である.過剰伐採,農地化,統治能力の欠如などによる森林消失がいまだに進む地域で,森林の管理主体である林業会社や林業局,あるいはローカルな森林ユーザーがもつ技術面での問題については,十分に検討されてこなかったように思われる.研究会では東南アジア各国での実施したわれわれの研究グループの研究事例を交えながら,下記の4点について報告し,関連分野の方々との活発な議論の材料を提供したい.
1) 択伐天然林が持つ矛盾:現在択伐の対象となる樹種の多くは,成長が早く材の比重が軽く加工しやすい特性を持つが,更新のための光要求性が高い.このため,択伐による林冠疎開では,更新が円滑に進まないという矛盾を内包している.持続性確保のためには,樹種の生活史全体を視野に入れた択伐手法の開発が必須である.別のオプションとして,伐採対象樹種を択伐施業の下で円滑に更新可能な樹種へと変換することも考えるべきである.
2) 植林林業が持つ問題:ユーカリやアカシアを利用する産業造林は,伐期が3から8年と極めて短く,養分収奪や土壌エロージョンの面では農業的なシステムとあまり代わりがなく,林地が持つ環境サービス機能の面ではほとんど期待できない生態系ではないだろうか.このような超短伐期のシステムにおける持続性の確保には農地生態系的な取り扱いが極めて重要ではないかと思われる.
3) ローカルな需要への対応:実態が十分把握できていないのが,薪炭のための利用である.このような薪炭利用の多くは,国有林内での違法行為に近い形で行われることが多く,利用の技術や効率的利用への技術開発は残念ながら不十分である.日本が有するクヌギなどを主体とした低林施業と呼ばれる薪炭林管理技術は,熱帯各国でも十分に応用可能なのではないだろうか?
4) 保護vs.利用の二分論を超えて:統治面においては土地利用区分を明確化することは,森林の有効な利用と保護にとってクリアーすべき点であろう.しかし,東南アジア熱帯においては,農地拡大の圧力がいまだ強く,林地に依存する住民の比率が高いため,机上の保護区設定はほとんど有効性を持たない地域が多い.利用と保護のカップリングのような仕組みの検討が重要だろう.REDDと呼ばれる森林消失速度低減による炭素発生量抑制の国際的な仕組みにおいても,統治の極めて難しい奥地林をどのように有効に保全していくのか,制度的な検討がきわめて重要と思われる.

〜〜来聴歓迎〜〜


第143回研究会

(共通テーマ)
日本の山村・海村における文化的景観の特色とその保全の課題を考える
−瀬戸内海の離島と長野県中山間地を事例として−


【話題1】
「瀬戸内海の島々における土地均分制度の有無と持続的な植生・土地利用景観の関連」
上原 三知(信州大学 農学部、助教))

【話題2】
「長野県姨捨棚田の重要文化的景観とその保全」
内川 義行(信州大学 農学部、助教)

  【日時】 2009年12月4日(金)午後16時00分〜午後18時45分

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨1】
2005年の日本造園学会80周年記念国際シンポジウムでは、世界普遍的な持続可能性を追求する一方で個性的な自然や文化を尊重する「持続可能なランドスケープ(sustainable landscape)」という概念が提案され、その実現に向けて、地域固有の自然環境や歴史文化に着目することで世界的な問題に挑戦しつつ、個性的な解を求めるべきとの指摘がなされた。
共有資源の利用に関してはコモンズへの関心が高まっているが、千葉徳爾は入会地(共有地)の分割は内陸では近世末から明治初年になってようやく行われはじめたものが多いものの、特に交通の便で商品生産が早くおこった瀬戸内地方の島峡や沿岸村落ではわが国で最も古くから割山や個人所有林を制度化していたと指摘する。 また宮本常一も、瀬戸内海の離島に見られる土地均分制度と海洋民の定着との関連性を指摘している。
このように日本の中で特に、雨が少なく森林の再生が難しい気候条件におかれながら、高い人口圧と製塩産業による森林等の自然資源の積極的な利用とその保全が早くから顕在化した瀬戸内海域では、どのような環境の保全・活用モデルによって、江戸期に訪れたリヒトフォーヘンやケンペル、シーボルトらに美しいと評価された景観の多様性と地域資源の持続性を担保してきたのかについて考察を行う。

【要旨2】
長野県千曲市の姨捨棚田は、その一部(当初約3ha)が平成11年,国内の棚田としては初の文化財・名勝に指定された。さらに2009年11月現在、周辺棚田(約75ha)を含む、地域一帯を新たな文化財・重要文化的景観として保全すべく選定の申出中である。
我が国における棚田の文化的景観価値は高く評価されるものの、その保全には(1)耕作の継続(@耕作者の確保、A耕作と維持管理の方法、B経営)、(2)住民の合意形成(@保全対象、A保全方法)等の課題を有している。特に棚田の存在は、毎年の耕作継続という営農行為が前提のため、一般的な文化財保護にみる凍結・静態的「保存」ではなく、規定された許容範囲における若干の改変をも認める動態的「保全」の考え方が不可欠となる。
姨捨棚田では、住民の耕作継続と合意形成に配慮し、狭小で不整形な区画の地域だけでなく、近現代の生活・生業の歴史を示す圃場整備地域をも含み保全対象とし、それらの産業遺産的価値を文化的景観の中に積極的に位置づけ保全計画を作成した。本事例をとおし、現代における動態的存在としての文化的景観の保全のあり方について考察したい。

〜〜来聴歓迎〜〜

第142回研究会

(共通テーマ)
タンザニアの農村における慣習の変化と農業へのインパクト
―土地利用と労働力確保に注目して―


【話題1】
「タンザニアの山地農村における土地利用とクランを中心とする土地保有との関係について」
山根裕子(名古屋大学農学国際教育教育協力研究センター)

【話題2】
「タンザニア農村における労働慣行の変容と農家の生計戦略」
一條洋子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

  【日時】 2009年10月30日(金)午後3時30分〜午後6時

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨1】
タンザニアの南北のほぼ中央、海岸部の大都市ダルエスサラームから約200km内陸にウルグル山塊と呼ばれる山がある。南北約55km、東西約30kmにわたって展開する山の全域にはルグルと呼ばれるエスニックグループの人々が約300年ほど前から斜面の農業を営みながら暮らしてきた。この山の東側標高600〜1300mに展開するキボグワ村にはシナモンやチョウジ、パンの木などの樹木作物から成る叢林的景観が発達した屋敷地がいくつも見られる。一方で、屋敷地の外側に広がる斜面の畑には単年生の主食用作物の栽培がおこなわれており、屋敷地と斜面の畑とでは植えられる作物が大きく異なっていた。本発表では、このような土地の利用の違いがこの村で暮らすルグルの人々のどのような社会文化的背景から生み出されているのかを、母方のクランを軸とする土地の保有の実態との関連を中心に説明したいと考えている。そして、市場経済の浸透が進み変容し続けている現在のタンザニアの農村においてのクランの実態とその意味をこの村の事例を元に考察してみたいと考えている。


【要旨2】
タンザニアのほぼ中央に位置するドドマ州のドドマ・ルーラル県は半乾燥地域であり、農業生産性は低く、経済水準の低い地域である。この地域の農業では、降雨に合わせた適期の耕起作業や、迅速な除草作業および収穫作業が求められ、往々にして家族労働力ではまかないきれない労働力を外部から確保する必要が生じる。こうした一時的な労働力需要の高まりに対し、かつては「労働交換」が広く採用されていた。労働交換は、現金を持たない小農が相互に家族労働を提供しあう慣行である。他の途上国農村と同様に、事例地においても労働交換は人々が農業を営み生計を維持するために重要な役割を担ってきた。ところが近年では、とくに現金需要の高まりから働き手の“労働交換離れ”が進み、外部労働力確保の手段は賃金雇用に置き換えられる傾向にある。しかしどの農家も一様に賃金雇用によって外部労働力を確保できるわけではない。本報告では、労働交換が衰退していく事例地において、個別農家が生計戦略として労働力調達方法をどのように選択しているのか、またその労働力をどのように利用しているのかについて、文化的背景を考慮しつつ明らかにする。

〜〜来聴歓迎〜〜

第141回研究会

東・東南アジア農業研究と地域研究
 
−研究会を継承・発展させるために−

 田中 耕司 氏 (京都大学地域研究統合情報センター)

【日時】2009月7月3日(金)午後4時〜午後6時


【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨】

東南アジアの自然と農業研究会の第1回研究会(1981年4月)が開かれて以来、はやくも30年近くになろうとしている。開催数にして140回、各年ほぼ5回開催のペースが守られてきたことになる。その第1回研究会以来、その開催に多少なりとも関わってきた者として、この数十年の研究会の歩み、そして発表者自身の研究関心の推移を振り返りながら、農業(農学)研究と地域研究との関連に焦点をあてつつ、回顧と展望を語ることとする。話題提供者が東南アジアでのフィールドワークをはじめた1970年代から80年代にかけては、農業研究の成果がそのまま地域研究の成果として発表できる状況にあった(もちろん地域研究への模索は続けられていたが)。一方、30年が経過して、東南アジアの農業や農村は大きく変貌した。グローバル経済の影響も計り知れない。調査手法も大きく変わってきた。発表者の現在の関心に引きつけながら、地域を対象とする農業・農村研究の将来の方向性について展望したうえで、参加者と議論を交わすことを期待している。 

〜〜来聴歓迎〜〜



第140回研究会

焼畑耕作が創出する空間的多様性
 
−タイ北部の「焼畑休閑林」および「焼畑停止林」に存在する植物資源−

福島 万紀 氏 (島根県中山間地域研究センター/京都大学地域研究統合情報センター)

【日時】2009月6月19日(金)午後4時〜午後6時

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨】

タイ北部の山岳地域において焼畑耕作を行う集落の周辺では、林齢の異なる様々な休閑林が恒常的に存在し、火入れによる攪乱に強い萌芽更新性の種、明るい場所に侵入するパイオニア種、遷移に伴って出現する耐陰性の種が、空間的多様性を創出しています。このような「焼畑休閑林」は、薪、食料、薬、道具、建築材など、山地民が日常的に利用する植物資源の供給源になっています。しかしながら、1960年代以降、焼畑耕作の規制が強化され、代替作物の導入が進んだ地域の一部では、放棄された「焼畑停止林」が拡大しました。このような「焼畑停止林」では、森林の遷移の進行に伴い、利用可能な植物資源が変化し、山地民がこれまで利用してきた植物資源が減少・消失する可能性があります。本発表では、タイ北部の山岳地域において焼畑耕作を継続する集落周辺の「焼畑休閑林」、焼畑停止後20年以上停止した集落周辺の二次林に存在する「焼畑停止林」それぞれに存在する植物資源の共通性および相違性について、これまで明らかにしてきた事例を紹介し、焼畑耕作が生み出す二次植生の多面的価値について考えます。 

〜〜来聴歓迎〜〜


第139回研究会

アーボリカルチュア(arboriculture)が結ぶ野生動物と人
 
インドネシア東部島嶼部住民による「半自然」的な森の創出

笹岡 正俊 氏 (財団法人自然環境研究センター・研究員)

【日時】2009月4月17日(金)午後4時〜午後6時

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨】

ウォーレシアからオセアニアに至る地域は,古くから今日に至るまで,「arborealな資源」----木本植物、および,森林の下層,ギャップ,辺縁における生物資源----の利用が,地域の人びとの必要の大部分を満たしてきたと言われています.Latinis[2000]は,そのような経済のあり方を"arboreal-based economy"と呼びました。筆者がこれまで調査を続けてきたインドネシア東部マルク諸島のセラム島においても,「arborealな資源」が人びとの生活を支える上で重要な役割をはたしており,実に多様なアーボリカルチュア(有用木本性植物の植栽・保育・利用)が見られます.
 本発表では、(1) そうしたアーボリカルチュアを通じて,集落を取り囲む熱帯林のなかに,いかに多様な「森」が創出・維持されているかについて述べます.そして,(2) そうした「森」を,野生動物がどのよう に利用し,また,そこに飛び込んでくる野生動物を人がどのように利用しているかを明らかにすることを通じて,アーボリカルチュアを媒介に,人と野生動物のあいだに「緩やかな共生関係」とでも呼ぶべき相互関係が生み出されている可能性について論じたいと思います.
 尚,インドネシアを含め,東南アジアの自然地域では「自然」を残すための地域開発に供するための地域へと景観が二極分化しつつあります(例えば,国立公園とオイルパームプランテーションなど).こうしたなか,アーボリカルチュアによって創出・維持されている「半自然」的な森をまもることは,地域の暮らしや生物多様性の保全にとってどのような意味を持つのか.本発表では,その点についても言及したいと思います.
 

〜〜来聴歓迎〜〜


第138回研究会

なにがアグロフォレストリーへの移行を支えたか
 
−タンザニア南部・焼畑農耕民の社会生態史−

近藤 史 氏 (神戸大学大学院農学研究科地域連携センター)

【日時】2009月2月13日(金)午後4時〜午後6時

【場所】京都大学稲盛財団記念館 3階中会議室

【要旨】

本研究の対象であるタンザニア南部高地に住む農耕民ベナは、古くは二次林で焼畑をおこない、植生が劣化してからは草地休閑型の焼畑をおこなってシコクビエを栽培してきたが、タンザニア独立後は政府が推奨する化学肥料を用いたトウモロコシの常畑耕作を受け入れた。しかし近年、連作による土地の疲弊や、人口圧の高まりによる農地の狭小化と薪不足、肥料価格の高騰が深刻化したため、タンニン抽出用に導入された早生樹モリシマアカシア(Acacia
mearnsii)を植えて、その林で焼畑をおこなうようになった。
新しい焼畑では、休閑期間中に地力維持を樹木の再生力に委ねる一方で、薪の採取を通して日常的に樹形や樹木密度を管理して経済価値の高い林を育成する。そして、薪炭を生産した伐採跡地で焼畑をおこなう。これは、農林業の複合を通して継続的な土地利用を可能にする、アグロフォレストリーへの移行であった。
本発表では、タンザニアの政策変化や市場の動向に照らしながらべナの社会生態史を分析し、このような農業改革を支えた要因について考える。
 

〜〜来聴歓迎〜〜


第137回研究会

マダガスカルのSRI稲作‐実態と発展可能性
辻本 泰弘 氏(京都大学大学院農学研究科)

【日時】2008月10月17日(金)午後4時〜午後6時
※研究所正門周辺工事中のため近衛通に面した北門からお入りください.

【場所】京都大学東南アジア研究所 東南アジア研究所 共同棟4階セミナー室
会場が変更されましたのでご注意ください!

案内ポスター [PDF:104KB]

【要旨】

アフリカ大陸に程近い、インド洋西端に浮かぶマダガスカルでは、古くからアジアイネが栽培されている。近年、このアジア稲作圏の西端において、System of Rice Intensification (SRI) と呼ばれる水稲多収農法が見出された。この農法を適用することで、大幅な増収のほか、化学肥料や灌漑水の節約が可能であるとされる。そのため、資源投入力に乏しい地域での生産性改善策として非常に期待が高まっている。一方で、報告されている15t/haを超えるような多収記録やその増収効果について疑問を投げかける声も大きく、現在まで国内外で議論が続いてきた。

このSRI稲作技術はかつての「米作日本一」の農家など、日本の篤農稲作技術と多くの点で類似性が認められる。このような精緻な稲作を行うマダガスカルの農民はどのような人たちであろうか。この技術の中に、現在停滞しているアジア・アフリカ途上国の稲作改善の糸口が見つかるのではないか。本発表では、マダガスカルの在来稲作を簡単に紹介しながら、21世紀の食糧生産においてSRIが果たしうる役割について考えてみたい。

〜〜来聴歓迎〜〜

第136回研究会

共催 G-COE「生存基盤持続型の発展を目指す研究拠点」
イニシアティブ2「人と自然の共生研究」

タイ北西部における山村農業の変遷― 伝統的農耕に及ぼす市場志向要因の影響

フォンリュブケ 留奈子 氏(オーストラリア国立大学太平洋アジア研究科)

【日時】2008月6月27日(金)午後4時〜午後6時


※研究所正門周辺工事中のため近衛通に面した北門からお入りください.

【場所】京都大学東南アジア研究所 東南アジア研究所 東棟2階第1教室

【要旨】

タイ国北西部山岳地域に散在する村落が、過去数十年に亘り辿った農業形態の変化過程は、背反的な次の二つの経済活動ベクターのせめぎ合いとして理解すると、同過程の特質と課題をより的確に把握し得る。その一つは「自給自足的な陸稲及び水稲耕作の維持」であり、もうひとつは「換金性作物耕作及び非農家的家業の導入」である。換言すれば前者は伝統農耕型ベクター、後者は市場志向型ベクターであり、前記の農業変遷ダイナミズムは両ベクター間の「最適な兼ね合い(optimum trade-off point)」を模索する山地民の試行錯誤の表れといえる。

これまでカレン山村地域の開発問題は、焼畑循環農耕(タイ語でrai mun wian)の正当性を掲げた政治的活動を巡る「文化強調主義」と、それに付随する負の影響を指摘するアンチテーゼ(所謂“Karen Consensus”)の「経済強調主義」の二分対立で議論されてきた。しかし山地農業変遷の現状と課題を理解するためには、両議論を補完的に考慮する必要がある。この観点から本考察は、タイ国メーホンソン県内に立地するカレン居住山村五ヶ村(スゴー:3村、ポー:1村、カヤー:1村)を対象に、カレンの人々の主要四生業(@焼畑耕作による陸稲栽培、A水田耕作による水稲栽培、B換金性作物栽培、C賃金労働従事)に照準を当て、異なる環境における経済活動の諸相を示す。その上で、山地生業の実践と従来議論の捨象に鑑み、カレンの人々にとって実現可能かつ有益な方策を探る。

〜〜来聴歓迎〜〜

第135回研究会

自然環境の「資源性」を評価する−植物社会学からのアプローチ

矢ケ崎 朋樹 氏(財団法人地球環境戦略研究機関 国際生態学センター)

【日時】2008月4月18日(金)午後4時〜午後6時


※研究所正門周辺工事中のため近衛通に面した北門からお入りください.

【場所】京都大学東南アジア研究所 東南アジア研究所 東棟2階第1教室

【要旨】

「保存食にするゼンマイ」、「炭(燃料)に利用されるコナラ」、「屋根葺きに使うススキ」、「神事の場であるタブノキ林」のように、地域に自生する植物は多様な目的の下で資源として有効利用され、その土地に暮らす人々の生活文化の基盤を支えてきた。しかし、今日の日本では、輸入木材や化石燃料への依存度の高まりを背景に人々の世代交代も相俟って、身近にある植物資源の保護と利用に関する知識・技術の伝承が急速に途絶えてきており、そのことが管理放棄に伴う森林の荒廃、ひいては災害の激甚化を招くなど、多くの問題を派生させている。植物を「資源」として利用する人間の叡智がその価値とともに次第に忘れ去られつつあり、このことが、自然環境と人間活動(生業・生活文化)との調和を通して維持・形成されてきた地域固有の景観(例えば里地里山)の持続可能性を脅かすと同時に、保全を考慮する上での阻害要因になっていると考えられる。 自然環境の保全を考慮する際には「自然性」が重要視される場合が多い。例えば、植物群落については、人の手が加わっていない自然植生に対して最も高い評価がなされる一方、人為的影響の下で成立した代償植生は低く評価される。しかし、自然環境と人間活動(生業・生活文化)との調和を通して維持・形成されてきた里地里山においては、「自然性」の視点だけでは計り知れない多様な“保全のインセンティブ”が内在しており、既存の手法では適切な評価結果が得られない場合がある。そこで、発表者は、植物社会学的な基礎研究に取り組むなかで、「自然環境の保全のインセンティブとは一体何であるのか?」という問題を前提として、自然環境の基盤を成す植生(植物群落)を対象に「保全のインセンティブに関連する“多様な特性”を表現するための手法開発」に着目してきた。

本発表では、植物群落に備わる多様な特性のうち、とくに、人々の暮らしに役立つ性質(以下、この性質を「資源性」と呼ぶ)を取り上げ、「資源性」の側面から植物群落を評価する試みについて紹介する。日本国内の里地里山を対象とした事例研究では、「食材・薬材・飲料」、「建築材」、「農具・漁具・猟具・民具」など、「資源性」を指標する15項目(以下、「資源特性」と呼ぶ)を設定し、植物種/群落の利用に関わる民間伝承・記載等の収集・分析を行った。この結果、 森林はすべての資源特性を包含した多特性空間であること 「資源特性の多様性」の観点では、「水田の保全」は「森林の保全」と同様の意味があること などが示唆された。

本研究における評価手法をベースに、植物利用の民間伝承に関する情報収集や他地域との比較分析を更に行うことで、植物群落に関する資源特性、地域特性(固有性)をより的確に具現化することが可能になると考えられた。ひいては、そのことが、自然環境保全のインセンティブ形成の役割を果たし得ると考えられた。

第134回研究会

タイ北部山地における伝統的チャ栽培を軸とした生業戦略とその選択要因

佐々木 綾子 氏(京都大学大学院農学研究科)

【日時】2008月2月15日(金)午後4時〜午後6時


※研究所正門周辺工事中のため近衛通に面した北門からお入りください.

【場所】京都大学東南アジア研究所 東南アジア研究所 東棟2階第1教室

【要旨】

タイ北部山地にみられる発酵食用茶「ミアン」の生産を目的とした伝統的な林内チャ樹園、いわゆる「ミアン林」は、原植生に近い多層森林構造を維持できることから、森林と調和的で持続的なアグロフォレストリーと評価されてきた。しかし近年における社会構造変化に伴うミアン林利用の動向と、生業としての経済的評価は十分行われてこなかった。長期的な社会経済分析は、「ミアン林」の持続性評価のみならず、タイ北部森林景観の将来的予測にも貢献が期待される。本論文では、1970年代の調査資料の残るミアン生産村において、過去30年にわたる生業の変容とその要因を明らかにするとともに、生業変容に伴う慣習法による土地利用慣行ならびに個人の資源用益権に関する概念の変遷を分析した。

その結果、1980年代前半には道路などのインフラ整備に伴いミアン生産と労働人口流入の拡大が進行したが、その後は市場の縮小に伴い生産規模、人口ともに減少し、村の経済状況は急速に衰退したことが明らかとなった。しかし2001年から始まったタイの緑茶ブームを契機としてミアンから飲料茶生産への転換がはかられ、村民主導の直接出荷経路の構築がこの転換をさらに加速した。このような生業の変容に伴い、慣習法において個々のチャ樹に限定されていた個人の用益権の範囲は、作物導入の場としての土地自体にまで拡大され、他作物への転換も視野に入れた慣習法変容の可能性が認められた。このようなミアン生産村内部の変化は、今後のタイ北部山地の森林景観の維持にも影響を及ぼす可能性を指摘した。

第133回研究会

中央アジア・アラル海流域の水問題に水文学が果たすべき役割

甲山 治 氏(京都大学 防災研究所)

【日時】2007年12月17日(月)午後1時30分〜午後3時30分


※曜日・時間・場所いずれも変則的ですのでご注意ください.
※研究所正門周辺工事中のため近衛通に面した北門からお入りください.

【場所】京都大学東南アジア研究所 共同棟3階 講義室(C307)

【要旨】

大規模灌漑によってアラル海が干上がった中央アジアのアムダリア・シルダリア流域には、水に関する多くの問題が存在する。それらを水資源および水循環の視点から考察するとともに、今後どのような研究活動が現状問題の解決に必要であるかを,実際の事例をもとに議論したい。


<132回定例研究会>

第132回定例研究会開催のお知らせ


<131回定例研究会>

第131回定例研究会開催のお知らせ


<第130回研究会>


「東南アジアの自然と農業研究会」「東南アジア学会関西例会」合同開催

森下 明子 氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)



<129回定例研究会>

第129回定例研究会開催のお知らせ


<128回定例研究会>

第128回定例研究会開催のお知らせ


<127回定例研究会>

第127回定例研究会開催のお知らせ


<126回定例研究会>

第126回定例研究会開催のお知らせ


<125回定例研究会>

第125回定例研究会開催のお知らせ


<124回定例研究会>

第124回定例研究会開催のお知らせ


<123回定例研究会>

第123回定例研究会開催のお知らせ


<122回定例研究会>

第122回定例研究会開催のお知らせ


<121回定例研究会>

第121回定例研究会開催のお知らせ


<120回定例研究会>

第120回定例研究会開催のお知らせ


<119回定例研究会>

第119回定例研究会開催のお知らせ


<118回定例研究会>

第118回定例研究会開催のお知らせ


(c)copyright 2002-2008 東南アジアの自然と農業研究会