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1999年度「アジア地域社会論」ゼミ・シラバス
はじめに
今年度は、「開発/文化/NGO」というテーマで、関連する文献を読む。そして文化人類学の研究をすることと、人々が生きる状況に係ることとを、いかに結びつけ実践してゆくかを考える。あらかじめ用意された正解はありません。先行研究や具体的な事例を学び、検討することをとおして、各自がそれぞれに状況と係り巻込まれてゆくスタイルを模索してください。
文化人類学は、フィールド・ワークを行い、「現地の人々の視点から」彼らの行為を解釈することを研究の大前提としてきました。しかし現地の人々は、建前としては世界を見る主体とされながら、実際には、人類学者がその文化を理解し、解釈し、叙述するための情報提供者として位置づけられてきました。現地の人々が、慣習だからとして無自覚なままに行っている様々な慣行や行為を導く前提として文化を捉え、その総体を描くのが人類学者の研究であったわけです。それは言いかえれば、その文化を生きる人々を、文化という意味の網に捉えられ操られるマリオネットと見なすようなものです。つまり、その文化の全体像や真の意味については明晰に語れないし分からない者、いわは当の文化の禁治産者にしてしまったわけです。
そうした力関係にもとづく文化人類学の成り立ちそのものに、現地のインテリから激しい批判が投げかけられています。それに応じて人類学の側からも内省と自己批判と、新たな人類学の可能性の模索が始まっています(Clifford 1988, 太田1998)。いっぽう、現地の人々自身が、自分たちの行為を説明し意味付け、その文化について饒舌に語り始めています。
さらには、人類学者がフィールド・ワークをするとき、かつての宣教師にかわって、開発プロジェクトの関係者やNGOのスタッフと頻繁に出会うようになっています。現地の人々から、何らかの形の開発援助プロジェクトを紹介してくれるよう要求されることも多々あります。
この十数年のあいだの、人類学をとりまく状況の変化をふまえ、人類学にどのような可能性があるかを、開発/文化/NGOというテーマにそって考えてゆきます。
講読文献リスト
文化人類学の現在
- 太田好信 1998 『トランスポジションの思想:文化人類学の再想像』世界思想社 \2,400。
- 岩波講座・文化人類学 1996第12巻『思想化される周辺世界』
- 清水昭俊「植民地的状況と人類学」
- 浜本満 「差異のとらえかた:相対主義と普遍主義」
- 古谷嘉章「近代への別の入り方:ブラジルのインディオの抵抗戦略」
開発と文化をめぐる問題
- 中村哲1993『ダラエ・ヌールへの道:アフガン難民とともに』石風社 \2,000。
- 伊勢崎賢治1997『NGOとは何か:現場からの声』藤原書店, \2,800。
- 岡本真佐子 1996『開発と文化』(20世紀問題ブックス 16)岩波書店。
- 東京大学社会科学研究所(編)1998『20世紀システム4・開発主義』東大出版会, \3,800。
- 末廣 昭「開発主義とは何か」「開発のイデオロギーと成立根拠」
- 絵所秀紀「経済開発理論と国際機関」
- 藤原帰一「ナショナリズム・冷戦・開発:戦後東南アジアにおける国民国家の理念と制度」
- 岩波講座・開発と文化 第1巻1998『いま、なぜ「開発と文化」なのか』\3,000
- 川田順造「いま、なぜ開発と文化なのか」
- 清水 展「開発の受容と文化の変化:現代を生きる先住民の居場所」
- 岩波講座・開発と文化 第3巻1998『反開発の思想』\3,000。
- Malkki, Liisa, 1995, “Refugees and Exile: From ‘Refugee Studies’ to the National Order
- of Things,” Annual Review of Anthropology, Vol.24.
- Fisher, William, 1997, “Doing Good? The Politics and Antipolitics of NGO Practices” Annual Review of Anthropology, Vol.26.
- Escobar, Arturo,1995, Encountering Development: The Making and Unmaking of the
- Third World, Princeton: Princeton University Press.
- King, Victor, 1999, Anthropology and Development in South-East Asia: Theory and
- Practice, Kuala Lumpur: Oxford Universtiy Press.
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